「A5ランクの牛肉が一番おいしい。」
そう思っている方は多いのではないでしょうか。
スーパーや焼肉店でも「A5ランク」という言葉を見ると、高級で特別なお肉というイメージがあります。
しかし、精肉担当者の視点から見ると、A5ランク=すべての人にとって一番おいしい肉、というわけではありません。
牛肉のおいしさは、ランクだけでは決まりません。
今回は、精肉担当者の視点から、牛肉の選び方や売場で考えていることを紹介します。
そもそもA5ランクとは何なのか
牛肉の格付けには、「歩留等級」と「肉質等級」という2つの基準があります。
アルファベットのA・B・Cは歩留等級を表し、数字の1〜5は肉質等級を表します。
肉質等級は、
● 脂肪交雑(サシの入り具合)
● 肉の色や光沢
● 肉の締まりやきめ
● 脂肪の色や質
などを基準に評価されます。
つまりA5ランクとは、「肉質が高く評価され、商品として取れる割合も高い牛肉」という意味になります。
昔と今で変わった牛肉の好み
一昔前までは、A5ランクからイメージされるような、サシがたくさん入った霜降り肉が好まれる傾向がありました。
口の中で脂が溶けるような柔らかさや、高級感が魅力だったからです。
しかし最近では、赤身のおいしさを楽しめる牛肉も人気が高まっています。
脂の甘みだけではなく、肉本来の旨味を味わいたいというお客様も増えています。
また、ブランド銘柄のA5ランク牛は、普段使いだけではなく、お祝い事や贈答用としても選ばれています。
牛肉は和牛だけではない
「牛肉」と一言で言っても、実はいくつかの種類があります。
大きく分けると、
● 和牛
● 国産牛
● 輸入牛
に分類されます。
それぞれ価格や特徴が異なり、向いている料理や求められる場面も変わります。
高級感を楽しみたい日もあれば、普段の料理で使いやすい牛肉を選びたい日もあります。
大切なのは、どの牛肉が一番上なのかではなく、目的に合った牛肉を選ぶことです。
「おいしい」は人によって違う
精肉売場でお客様からよく聞かれる質問があります。
それは、
「どのお肉が柔らかいですか?」
という質問です。
しかし、柔らかさというのは人によって感じ方が違います。
そのため、店員として「この肉が絶対に柔らかい」と伝えることは簡単ではありません。
そこで、実際には比較をしながら説明することが多いです。
「こちらの方が脂が多く、とろけるような食感です」
「こちらは脂が少なく、肉の旨味を感じやすいです」
というように、お客様の好みや料理に合わせておすすめを変えています。
精肉担当者にとって大切なのは、正解の肉を押し付けることではなく、お客様に合った肉を一緒に探すことです。
精肉担当者でも難しい牛の世界
牛肉の品質は、売場に並んでいる肉だけで決まるわけではありません。
畜産業界では、子牛の段階で行われるセリがあります。
市場や血統によって異なりますが、一般的には去勢した雄よりも雌の子牛の方が高値で取引されることが多く、血統や系統も価格を左右する大切な要素です。
わずか数十秒のセリで、一頭一頭の牛の価値が決まります。
精肉担当者として肉を扱っていても、牛そのものの価値を見極める世界は非常に奥深く、難しいものです。
季節によって変わる牛肉の売り方
牛肉の売れ方は、季節によっても変わります。
以前は夏になるとBBQ需要が大きくありました。
しかし最近では、夏の暑さが厳しくなり、屋外で肉を焼く機会が減っています。
そのため、夏でもすき焼きやしゃぶしゃぶなど、家の中で楽しめる牛肉料理を提案することが増えています。
冬は鍋料理の需要はもちろん、クリスマスにはローストビーフ用のブロック肉、年末にはすき焼き用の高品質な牛肉など、季節ごとに売場の作り方が変わります。
牛肉を扱う難しさと精肉部のやりがい
牛肉は脂の変化や色の変化が起こりやすく、品質管理が難しい食材です。
そのため、生肉を多く扱わない店舗では、牛肉の品ぞろえを控えている場合もあります。
また、物価高の影響で牛肉自体が売れにくくなっているのも現状です。
しかし、精肉担当者は「売れない」と決めつけるのではありません。
どうすれば牛肉の魅力が伝わるのか。
どんな料理提案ならお客様に選んでもらえるのか。
そこを考えることが精肉部の仕事であり、やりがいでもあります。
おわりに
A5ランクという言葉は、牛肉を選ぶ時の一つの目安になります。
しかし、本当に大切なのは「自分がどんな料理で、どんな味を楽しみたいか」です。
脂の甘みを楽しみたい日もあれば、赤身の旨味を味わいたい日もあります。
精肉担当者は、ただ高い肉を販売しているわけではありません。
お客様一人一人の好みや食卓を想像しながら、その人に合った牛肉を提案する仕事です。
次に牛肉を選ぶ時は、ぜひ「A5だから」ではなく、「今日はどんな料理で楽しみたいか」という視点でも選んでみてください。

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