「このお肉、売れないんだよね。」
精肉部で仕事をしていると、そんな言葉を耳にすることがあります。
もちろん、人気のある部位もあれば、どうしても動きが鈍い部位もあります。
しかし私は、「売れにくい肉」はあっても、「売れない肉」はないと思っています。
精肉担当の仕事は、お肉を並べることだけではありません。
そのお肉の魅力をどう伝え、どうすればお客様に「今日はこれにしよう」と思っていただけるかを考える仕事でもあります。
一頭の命を無駄にしないために
お肉は動物からいただく命です。
そのため、一頭の牛や豚から人気の部位だけが取れるわけではありません。
バラ肉やロースだけでなく、モモやウデなど、さまざまな部位があります。
一頭を余すことなく活用することは、生産者や取引業者にとっても大切なことです。
だからこそ精肉担当者は、人気の部位だけではなく、それぞれの部位の魅力を伝え、多くのお客様に選んでいただける売場を目指しています。
売れる商品には3つの要素がある
私は、お客様に商品を選んでいただくためには、次の3つが大切だと考えています。
● 商品に対するイメージ
● 価格
● 売場づくり
どれか一つだけではなく、この3つがそろうことで、お客様は商品を手に取ってくださいます。
売場づくりで商品の魅力は大きく変わる
売場づくりは、お客様が思っている以上に大切です。
例えば、同じ商品でも「本日のおすすめコーナー」に並べるだけで、商品によっては通常の2〜3倍売れることもあります。
お客様の目に留まりやすい場所に置くこと。
季節や献立をイメージしやすい売場を作ること。
こうした工夫だけでも、商品の魅力は大きく伝わります。
価格だけに頼る売り方は続かない
もちろん、特売価格にすれば商品は売れやすくなります。
しかし、価格だけに頼った売り方を続けると利益を圧迫してしまいます。
利益が確保できなければ、生産者や取引業者、スーパーも良い商品を提供し続けることが難しくなります。
だからこそ、価格だけではなく、「この商品にはこんな魅力があります」という価値を伝えることが大切なのです。
ブランドは「説明できる」まで伝えたい
ブランドは、名前だけで作られるものではありません。
「前に買っておいしかった。」
そんな体験の積み重ねが、ブランドへの信頼につながっていきます。
私は、それだけではなく、お客様自身がそのブランドの魅力を誰かに説明できるくらいまで伝えたいと思っています。
「この豚肉は○○にこだわって育てられているんだよ。」
「この牛肉は生産者がこんな思いで育てているんだよ。」
「このブランドは脂の甘みが特徴だから、すき焼きにするとおいしいよ。」
そんなふうに、ご家族や友人との会話の中で自然と商品の魅力を伝えていただけるようになれば、そのブランドの価値はさらに高まっていきます。
だからこそ、精肉担当者は良い商品を並べるだけではなく、そのブランドが大切にしていることや、生産者の思い、商品の特徴を分かりやすく伝え続けることも大切な仕事だと考えています。
試食は商品の魅力を伝える最高の方法
珍しい部位や新しい味付け商品を売り込みたいとき、最も効果的なのが試食です。
まずは味を知っていただくこと。
それだけで、「思ったよりおいしい」「家でも作ってみたい」と感じていただけることがあります。
試食は、味だけではありません。
焼ける音や香り、できたてのおいしそうな見た目も、お客様に商品の魅力を伝える大切な要素です。
五感で商品の魅力を感じていただくことで、「食べてみたい」という気持ちが自然と生まれます。
売っているのは肉ではなく「食卓」
精肉担当は、お肉を販売している仕事だと思われることがあります。
もちろん、それも間違いではありません。
しかし私たちが本当に届けたいのは、お肉そのものではなく、その先にある食卓です。
「今日は家族で焼肉をしよう。」
「子どもが好きな生姜焼きを作ろう。」
「頑張った日のご褒美にステーキを食べよう。」
そんな食卓を想像しながら商品を作り、売場を考えています。
おわりに
「売れにくい肉」はあっても、「売れない肉」はない。
私はそう思っています。
大切なのは、そのお肉の魅力をどう伝えるか。
どんな料理で楽しめるのか。
どんな価値があるのか。
それを分かりやすく伝えることができれば、お客様の選択肢は広がります。
売場には、お客様の目には見えない工夫がたくさんあります。
「どうすれば、このお肉をもっとおいしそうに感じてもらえるだろう。」
そんなことを毎日考え続けることが、精肉担当の一番の面白さなのかもしれません。
精肉担当の仕事は、肉を切って並べるだけではありません。
命を無駄なく届け、その価値を伝え、お客様の食卓をもっと豊かにする。
そんな売場づくりを、私はこれからも大切にしていきたいと思っています。

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