「精肉部の仕事って、肉を切ってパック詰めをする仕事ですよね?」
そう思われることが多いかもしれません。
確かに、包丁を使って肉を切り、商品を作ることも私たちの大切な仕事です。
しかし、私が精肉チーフとして毎日一番考えているのは、「今日は何を切るか」ではありません。
「今日はどう売るか」です。
お客様に喜んでいただくために、どんな商品を作り、どんな売場をつくるか。それが精肉部の本当の仕事だと考えています。
精肉部の本当の仕事とは
スーパーに肉が並ぶまでには、多くの人が関わっています。
畜産農家が大切に育て、屠畜・加工場で商品として扱える状態にされ、物流を経て、ようやくスーパーへ届きます。
私たち精肉部は、その**「肉のバトン」の最後の走者**です。
だからこそ、「ただ商品を並べればいい」とは思っていません。
ここまでつないできた人たちの想いを無駄にしないためにも、一つひとつの商品を丁寧に作り、お客様に手に取っていただける売場をつくることが大切だと考えています。
そして、私たちの仕事は肉を切ることではなく、「どう売るか」を考えることです。
どんな商品を作ればお客様に喜んでもらえるのか。
どんな売場なら肉の魅力が伝わるのか。
その積み重ねが、売場の価値や利益につながります。
さらに、お客様に肉の価値をしっかり伝えることができれば、その価値が正しく評価され、生産者や畜産業全体が持続していくことにもつながります。
私は、これまでの経験や知恵を活かし、お客様に「このお肉を買ってよかった」と思っていただけることが、精肉部の仕事だと考えています。
牛肉・豚肉・鶏肉では、売り方の考え方が違う
前提として、私たちが扱っているのは「牛・豚・鶏」ではなく、「牛肉・豚肉・鶏肉」です。
言い換えれば、「牛の肉」「豚の肉」「鶏の肉」。
命をいただいて食卓へ届けられる大切な食材だからこそ、一つひとつの商品を丁寧に扱い、その価値をお客様へ届ける責任があります。
同じ「肉」でも、牛肉・豚肉・鶏肉では、お客様が求めるものや売場づくりの考え方が大きく異なります。
牛肉は「ごちそう」を売る
牛肉は、焼肉、ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、ごちそうとして食卓に並ぶことが多いお肉です。
どの料理も牛肉が主役になることが多く、例えばステーキなら「焼いて食べる」という目的がはっきりしています。
だからこそ、精肉部では「どのくらいの厚さなら一番おいしく食べてもらえるか」を考えながら商品を作ります。
牛肉は、おいしさを最大限に引き出すための商品づくりが大切だと考えています。
豚肉は「毎日の食卓」を支える
一方で、豚肉は日常使いのお肉です。
特に切り落としやこま切れは、炒め物やカレー、肉じゃがなど、さまざまな料理に使われます。
だからこそ、私が大切にしているのは「どのパックを選んでも満足していただける品質」です。
どの商品を手に取っても、新鮮で品質の良い商品であること。
毎日の食卓を支える商品だからこそ、品質を安定させることを意識しています。
鶏肉は「手軽さ」が求められる時代へ
鶏肉は、忙しい毎日の中で、できるだけ調理の手間を減らしたいというニーズが高まっていると感じます。
そのため、唐揚げ用にカットした鶏もも肉や、筋を取ったささみなど、すぐに調理できる商品は人気があります。
また、一度にまとめて購入して冷凍保存する家庭も多いため、大容量の商品も必要です。
お客様の暮らし方の変化に合わせて商品を提案することも、精肉部の大切な仕事です。
「どう売るか」を考える仕事
私が仕事で一番大切にしているのは、「どうすればお客様に喜んでいただけるか」を考え続けることです。
そのためには、商品づくりの技術だけでなく、売場づくりの技術も欠かせません。
天気や曜日はもちろん、年末やお盆、ハロウィン、クリスマスなどの季節のイベント、さらには食のトレンドにも目を向けながら、「今、お客様が求めているものは何か」を考え、売場を提案しています。
売場に正解はありません。
だからこそ、毎日試行錯誤を繰り返しながら、お客様に喜んでいただける売場を目指しています。
また、「どう売るか」を考えるときに大切なのは、お客様一人ひとりの暮らしを想像することです。
一人暮らしの方もいれば、4〜5人の家族もいます。
「今日は使い切りたい」「冷凍用にまとめ買いしたい」など、買い方もさまざまです。
だからこそ、少量パックから大容量パックまで幅広く品揃えし、どんなお客様にも選びやすい売場を目指しています。
商品は「並べれば売れる」ものではありません。
どんな方が、どんな場面で手に取るのかを想像しながら品揃えを考えることも、精肉部の大切な仕事です。
おわりに
私は、この仕事は生産者、お客様、そして私たち小売のすべてをつなぐ仕事だと考えています。
生産者が大切に育てた命を、お客様に「おいしかった」と喜んでいただける形で届けること。
その結果として、生産者・お客様・私たち小売の三者が笑顔になれることが、私にとって理想の仕事です。
もちろん、この仕事は社会情勢や天候、相場など、さまざまな影響を受けます。
だからこそ、現状に満足せず、新しい知識や技術を学び続け、お客様にとってより良い商品や売場を考え続けたいと思っています。
このブログでは、現役精肉チーフだからこそ伝えられる肉の知識や売場づくりの考え方、仕事の面白さを発信していきます。
肉をもっと身近に、もっと面白く。
そんなきっかけになれたらうれしいです。

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